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「ワンダーフェスティバル2018[夏]」ガイドブックから見る当日版権フィギュアの傾向

今注目の「1/12スケール」フィギュアをめぐるあれこれ 「AK-GARDEN14」レポート

【氷川教授の「アニメに歴史あり」】第5回 追いかけてみる、心の視線

「コア・ファイター、コンビネーションGo! ガンダム、イン!」  1979年、「機動戦士ガンダム」のテレビ本放送中のクローバーCM「ガンダム合体セット」で流れたかけ声である。最近のSNSで、ガンダム発進部分に合わせた「ガンダム××××」が子役のせいか聞きとれないと話題になった。公式ではなくCM用キーワードだから書籍にも載っていない。だがこれは、「ガンダム、フォロー!」以外考えられない。カメラワーク用語から、理由も推定できる。  筆者は高校生時代、「宇宙戦艦ヤマト」の現場で入手した絵コンテを熟読して演出の基礎を知った。アニメ雑誌もなく専門書も乏しい時期、自分で解析したことが後々良かった。中でも「Follow(フォロー)」は謎めいたカメラワークで印象的だった。被写体の位置が画面内で固定され、背景を引いて移動を表現することと、「→ 台」という指定が撮影台というのは見れば分かるのだが、問題は「フォロー」の意味である。そんな話を近年の知識を交えつつ、つなげてみよう。  前回の安彦良和による談話では「戦いが激しくなって舞台から飛び出たら、カメラが追っかけるので紙(フレーム)を追加する」と語られていた。これが「フォロー」の本質である。徒競走を想定してほしい。「ヨーイ!」でランナーが緊張し、「ドン!」で駆け出す。緊張の間はカメラ位置は変わらず、静止した時が流れる(ズームであってもカメラは固定)。走り出しの動きの瞬発力を、周囲との対比で伝えるためだ。やがて走りが定速に近くと、カメラもランナーを追って同じ速度で走って被写体を画面にとらえる。これから始まる接戦の様子を伝えるためだ。背景は流れ、他のランナーと追いつ追われつの速度差も描かれるだろう。この「被写体固定でカメラが追う」が「Follow」なのだ。  実写なら、カメラを移動車に乗せて追う。パワーアップ版の「DX合体セット」の商品構成なら、履帯がついて走るGアーマーの上にガンダムが立っているイメージだ。実写映画では撮影を「シューティング」、編集前素材を「ショット(shootの過去分詞で“撃たれたもの”)」と呼ぶ。撮影現場は「狩猟の場」であり、カメラは銃なのだ。もし日没までにOKテイクのノルマがあれば、生の獲物(ライブ)をいくつ狩ることができるか、緊張が伝わって現場をひとつにまとめる。 ……という諸々を考えれば、ガンダムが獲物を追跡(フォロー)してメインカメラで敵機をとらえ、射撃して狩る行動は「フォロー」以外考えられない。商品周りに富野由悠季総監督が深く関与していることは近年判明しているから、なおのことである。日本大学芸術学部時代、走る人に台車で併走して撮影し、画面内の移動方向によって主観時間に差が生まれる「フォロー実験」をした談話もあるのだから、監督にとっては常識のはずだ。