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【氷川教授の「アニメに歴史あり」】第3回 時空連続体が生み出す生活感

4月5日に高畑勲監督が亡くなった。大きな喪失感で落ち着かない中、マスコミからの追悼コメント依頼が来て対応せざるを得なくなったとき、「生活に潜む驚きと喜びの発見」という発想がいかに日本のアニメづくりの方向性を変えたか、影響の大きさを強調した。「美少女が食事など生活を見せるだけで30分もたせるアニメ」が当たり前になった現在、それを当たり前でなくした人がいるという歴史的評価だ。今回はその一環として、現代アニメに大きな価値を生む「生活描写」と「劇的空間の創出」について書いてみたい。  3DCGでアニメを作る時代、これは古くて新しい問題である。たとえば2017年に映画「BLAME!」で瀬下寛之監督に取材したとき、「3DCGの映画への適用は美術部門の舞台装置のCADから来ているから、ポリゴン・ピクチュアズは舞台づくりから入っていきたい」という趣意の話に大いに触発された。言われてみれば同社で「山賊の娘ローニャ」(14)を手がけた宮崎吾朗監督は、三鷹の森ジブリ美術館を手がけた建築家だ。同作の室内描写を見て「建築の才能は3DCGアニメ向きだな」と思ったことに、今の話はつながっている。  そうした諸々の事象は、高畑勲監督がアニメーター時代の宮崎駿と組んで実現した「描き割りからの脱出とリアル風空間における生活実感の獲得」という1970年代の挑戦を原点としている。