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【明田川進の「音物語」】第24回 「はれときどきぶた」の音楽のこだわりと「練馬大根ブラザーズ」

1997年から98年にかけて「はれときどきぶた」というテレビアニメが放送されました。原作は児童文学で、企画には関わっていないので想像ですが、アニメ化にあたっては原作者にこのような流れでやるときちんと説明して、内容も相当もんだのではないかと思います。それぐらい自由でハチャメチャな内容で、原作を知らない方は児童文学がもとになっているとは感じないかもしれません。アニメならではの楽しさに満ちた本当に面白い作品で、いつまでもやっていたいなと思いながら収録に臨んでいました。

制作はグループ・タックで、代表の田代(敦巳)氏からきた話でした。クレジットでは中武敬文さんが音楽監督、アフレコ演出が僕という区分けになっていますが、これは監督のワタナベシンイチさんに音楽へのこだわりがあったからでした。音楽は音響監督がつくった音楽メニューをもとにしたため録りではなく、監督と作曲家が直でやりとりするのが主で、中武さんは専門家としてその部分をサポートする役割を担当されていました。曲の発注も「こんな曲に」というのではなく、わりと絵面(えづら)にあわせた具体的なものが多かったと思います。

ただ、そうした凝ったつくりのせいで、前回お話した「うたわれるもの」 のときとは違ってスケジュールどおりに絵がなかなか上がらず、アフレコ時の絵はかなり厳しいものが多かったと記憶しています。絵の素材が思うようにこなかったり、制作が立て込んで監督本人がアフレコ現場になかなか来られなかったり、ときには絶対に収録に間に合わせるようにと、監督が前日の夜にスタジオの近くまできて車の中で寝ているなんてこともありました。ワタナベさんの演出へのこだわりゆえで実際面白かったのですが、音響制作担当も大変だったはずです。

リアルな傾向の作品だと、やっぱりアフレコ時により絵ができていたほうが音をつけやすいのですが、「はれぶた」のようなギャグの場合は、制作状況は別にしても役者さんの芝居や音楽におぶさる部分が多かったように思います。仮に絵ができていなくてもどう動くかは監督が分かっているわけですし、先に音をつくってそれに合わせて作画することも随分ありました。

ご存知の方も多いと思いますが、ワタナベさんは「ルパン三世」が好きで、アフロの髪型に赤いジャケットを着ていつもスタジオに来ていました。また、「はれぶた」にはご自身がモデルのキャラクターがいて、他の作品では声の出演もされていました。大地丙太郎さんなど監督自身が声を入れることをやりだしていた頃で、僕としては全然問題ないんじゃないかと思っていました。監督自ら演出して自分でやっているわけですから。

以前、このコラムでも少し触れたことがありますが 、ワタナベさんは「はれぶた」のあとに「おろしたてミュージカル 練馬大根ブラザーズ」(2006)というオリジナルアニメを手がけます。「はれぶた」でもまるまるミュージカル調につくった回(※57話Bパート「あぁ絶叫!ミュージカル話」)がありましたが、当時からああいったものをやりたいという夢があったのでしょう。この作品の音響制作は我が社がやりましたが、とにかくスケジュールは大変だったみたいです。ミュージカルですから絵と音楽がシンクロしてなくちゃいけませんし、1クールだったからギリギリなんとかなったんじゃないでしょうか。この作品も、ワタナベさんならではの演出がとても面白かったです。

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