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「攻殻機動隊」「イノセンス」4Kリマスター版の威力 暗部にこだわる仕上がりに押井守監督も太鼓判

押井守監督が手がけた劇場アニメ「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(以下「攻殻機動隊」)と「イノセンス」の4K ULTRA HDブルーレイの発売に先がけて、メディア向け特別上映会が5月18日に行われた。

当日は、「攻殻機動隊」全編と「イノセンス」冒頭部分の上映後に、押井監督とリマスター作業を手がけたキュー・テックの今塚誠氏が登壇。自身の代表作である2作品が4Kリマスター化されることについて、押井監督は、「『イノセンス』は、ずっと4Kで見てもらいたいと思っていた作品。アニメは実写の役者の存在感にはかなわないので、その時代の技術でどれだけ緻密な映像を作れるかということに力を尽くしてきました。『イノセンス』はその総決算ともいえる作品で、映像自体が持つ力を最大限に出そうと考えていたんです。ぜひソフトを手にして、気にいったシーンをじっくりと何度でも見てほしい」と自信をのぞかせた。「攻殻機動隊」については、「正直なところ、最初は不安でいっぱいでした。『イノセンス』に比べると、そもそも精密度のケタが違う。僕にとってアナログ最後の作品で、思いきり背伸びをしてつくったところがあって、手仕事でさまざまな工夫を施しているんですよ。それゆえに執念がこもっていて、人間の目で確認してやっているよさはあるのですけれど。仕上がった映像を見ると、僕らが当時つくったものとは物理的に違うものになっていて、35ミリフィルムの情報量の多さをあらためて感じました。これまでの『攻殻』とは良い意味で別物の、“違う体験”ができると思います」と驚きを明かした。

4Kリマスターの実作業に話題が移ると、今塚氏は、「35ミリフィルムを16ビット5Kというキュー・テック最大の解像度でスキャンして、作業しています。4KはHDの約4倍の情報量があり、またSDR(スタンダードダイナミックレンジ)とHDR(ハイダイナミックレンジ)では見え方が変わってきますので、技師と細かく相談しながら修正をほどこしています。根本的な考え方として、輝度を上げつつもHDR化したときに色彩設計を壊してはいけないことと、光のない部分はSDRと同じような見え方をするべきというものがあります。光を強く見せられるような処理を部分的に行う一方で、光が当たらず、見えてはいけない部分もありますので、そのあたりは既存のマスター映像を参考にしました」と勘どころを語った。押井監督からも、「僕の作品は暗部にこだわってきたので、そこが浮いてしまうことを最も恐れていたんです。制作当時は“濡れた暗部”にしたいなんて話していました。4Kリマスター版では、オリジナル版の考え方を踏襲しつつ、見せすぎることなく見せているという印象でした」と、その仕上がりに太鼓判を押した。また、4Kでは色域がひろがることで、今まで見ることができなかった色合いが実現でき、特に中間色が鮮やかになっているとも語られた。

最後に押井監督から、「4Kにしたい作品は『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』や『天使のたまご』など、たくさんあります。『天使のたまご』は、信じられないくらい暗部に情報が入っているんです。僕は過去にやったことは忘れる主義ですが、自分の作品をリニューアルすることは大好きなんですよ。ただ、どうしても予算という問題がありまして……。今回の4Kリマスター版が売れれば、予算を出してもらえるので、売れてほしいなと(笑)。リニューアルする技術があるのにできないというのは、すごくもったいないことですから。今回の4Kリマスター版を買ってくださる方は、ぜひいいモニターもそろえて最高の環境で楽しんでください。僕もこれを機会に、モニターを買い直そうと思っています」と呼びかけた。

4K ULTRA HDブルーレイと通常ブルーレイによる「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」4Kリマスターセットは6月22日に発売予定で、価格は9800円。期間限定で「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」と「イノセンス」の4K ULTRA HDブルーレイのセット商品も同時発売され、価格は1万2800円(いずれも税抜き)。

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