
この年までアニメに関わることができているのは、周囲にいる人たちのおかげです。僕はアニメの世界に育ててもらったという気持ちをずっともっていて、ここ数年はそれを少しでもお返ししようという仕事が増えてきています。ギッちゃん(杉井ギサブロー氏)に誘われてやることになった京都精華大学で音響を教える授業は4年ほど前に終わりましたが、その後は某声優事務所でジュニアの人たちを教える授業を定期的に行っています。この授業のことは第11回 と第12回 でお話しました。
去年は、「妖怪アパートの幽雅な日常」で久しぶりにテレビシリーズの音響監督をやることになり、CDドラマでキャスティングした豪華な顔ぶれのまま、やりやすい仕事をさせてもらいました。その他、映画祭の審査員や、この連載のようなインタビューなど、現場の仕事からは離れた仕事や若い人に教える仕事の比重のほうが多くなってきました。教えてきた人たちが徐々に一人前になって、音響の現場で会えるようになってきたのはうれしいかぎりです。
音響の仕事は、フィルムを使わずデジタルでやるようになって久しくなりましたが、若い人たちは今の環境でどのような音をつくろうかと、いろいろ考えながらやっていると思います。僕自身そうした仕事にふれるたびに、「ああ、こういう方法があるのだな」と驚くことも多いです。音に関する仕事は本当に増えてきていて、僕が理事をしている音声連(※日本音声製作者連盟)に加入している会社の他にもゲームの仕事などをしている会社が今はたくさんあります。テレビアニメの本数も多くなり、海外の資金でつくられる作品も増えてきました。ただ、もし海外からの資金がストップしたときに日本の予算だけで良いものがつくっていけるのかということについては、どこかでもう一度考えたほうがいいのではないかと個人的には思っていて、そうした動向についても気になっています。
最近の変化では、ネットで映像が簡単に見られる環境になってきたのも大きいですよね。僕は映画のDVDやブルーレイを買ってよく見ているのですが、ソフト売り場のコーナーがどんどん縮小していっているのを肌で感じています。TSUTAYAなどのレンタルショップが店舗を急激に縮小していったり、業態を変えたりしていることが報じられていますが、ネットで簡単に見られるとなったら、地方の人はお店ではなく圧倒的にそちらに流れてしまうと思います。音づくりもこうした変化と無縁ではなく、ネットならではのつくり方が求められてきているはずです。
この連載をはじめてから、いろいろな場所で「アニメハックのコラムを読んでいます」と声をかけてもらうことが増えてきました。音響の話に興味をもってもらうきっかけになればとうれしく思っています。